弁理士は、特許出願などの代理を行う資格で、理系に人気がある資格です。
弁理士は具体的にどのような仕事をするのでしょうか?
弁理士が所属する代表的な組織として、特許事務所と企業の知的財産部とがあります。
この記事では、特許事務所と企業の知的財産部に所属する弁理士の仕事内容について、それぞれ解説します。
Contents
特許事務所における弁理士の仕事
弁理士の約8割は、自分で特許事務所を経営したり、あるいはすでにある特許事務所に勤務したりしています。
従って、弁理士のほとんどは特許事務所という立場で仕事をすることになります。
では、特許事務所における弁理士の仕事としてどのようなものがあるのでしょうか?
代表的な業務は以下のようです。
特許事務所の仕事
- 特許明細書の作成
- 拒絶理由通知対応(意見書・補正書の作成)
- 特許調査
- 鑑定
- 異議申立て、無効審判
- 特許訴訟
- 意匠・商標業務
特許明細書の作成
弁理士の仕事の花形とも言えるのが、特許出願のための特許明細書の作成です。
クライアントから特許出願をしたい旨の依頼を受けて、出願の対象となる発明をヒアリングし、その内容を特許明細書に落とし込みます。
特許明細書の作成は、以下のようなプロセスで行うことが多いです。
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1発明のヒアリング
クライアントと打ち合わせをして、特許出願したい発明の内容や取りたい権利範囲を聞き出します。
発明のヒアリングにおいては、技術を理解すること、クライアントの要望(明細書に何を書きたいか、どういう権利範囲にしたいか、など)を正確に読み取る能力が必要になります。
クライアントの側で、発明が固まっていない場合も少なくなく、クライアントが持っている情報の中から発明となる観点を整理して出願に結びつけられるかが、弁理士としての腕の見せ所です。
なお、クライアントの側で、ある程度しっかりした発明提案書を作っている場合は、発明のヒアリングは行わず書類だけ受け取って、特許明細書の作成を進める場合もあります。
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2特許出願明細書のドラフト
クライアントとの打ち合わせの内容をもとに、明細書のドラフティングを行います。
技術内容を正確に記載することはもちろん、将来的な審査の場面を想定して落とし所を仕込んだり、発明が適用され得る実施例、変形例を網羅的に書くことも重要なポイント。
弁理士としての実力が最も問われる仕事といっても過言ではないでしょう。
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3クライアントによる原稿チェック、修正、出願
明細書のドラフトが出来上がると、それをクライアントに送付してチェックしてもらいます。
その際、クライアントから記載内容の修正や、新しい実施例を追記を依頼されたりする場合があります。
このようなやり取りを何度か繰り返し、明細書が仕上がったら、晴れて特許出願を行います。
拒絶理由通知対応(意見書・補正書の作成)
特許出願後に審査請求を行うと、特許庁での出願の審査が開始されます。
その際、多くの場合は特許庁から拒絶理由通知(この特許出願はこういう理由で特許にできませんという通知)を受けます。
この拒絶理由通知への対応を行うのも弁理士の主要な業務の一つです。
対応方針をクライアント側で考えて、弁理士はそれに沿って意見書・補正書を作成する場合と、弁理士側で反論の方針から検討する場合とがあり、それはクライアントによりけりです。
(クライアントが大企業だと、前者のことが多い)
作成した意見書・補正書のドラフトは、クライアントによってチェックされ、最終的に特許庁に提出されます。
ほとんどの特許事務所の弁理士にとっては、拒絶理由通知対応と特許明細書作成が業務の中心になります。
特許調査
世の中に存在する特許文献を調べることを特許調査といいます。
特許調査にはいくつか目的がありますが、特許事務所の弁理士が行うのは、主に出願前の先行文献調査です。
特許事務所によっては、無効資料調査や侵害予防調査を扱っており、これらの目的で調査を行う場合もあります。
鑑定
鑑定とは、特許に対する弁理士の見解を書いた書面を作成する業務です。
鑑定には、
- 侵害鑑定:クライアントの実施製品が対象特許を侵害するかどうかの見解を述べる
- 無効鑑定:対象特許が先行文献によって無効になるかどうかの見解を述べる
の大きく2種類があります。
これらの判断は一筋縄ではいかないことが多く、弁理士としての知識や経験が大きくものを言う高度な仕事だと言えます。
異議申立て、無効審判
クライアントの依頼を受けて、対象特許を無効にすべく異議申し立てや無効審判の請求を行う業務。
先行文献をもとに、いかに対象特許の特許性を否定するロジックを組み立てられるかという、高度な仕事です。
特許訴訟
特定侵害訴訟代理業務試験に合格し,所定の条件を満たした弁理士は、特定侵害訴訟の訴訟代理人となることができます。
基本的に訴訟は弁護士の領域ですが、特許訴訟となると、文系の出身者がほとんど弁護士では、特許に関する技術をうまく理解できない場合があり、そんなときは弁理士の出番となります。
弁理士が訴訟に携わるケースはあまり多くはありませんが、弁理士の仕事の中でも最も華々しいと言えるでしょう。
営業
特許事務所のパートナー弁理士や、独立開業した弁理士は、営業で新規クライアントを開拓したり既存の顧客をつなぎ留めたりするのも重要な仕事。
定期的に顧客まわりをして、クライアントのニーズをヒアリングしたり、特許実務に関するセミナーを開催して見込み顧客を呼び込んだりします。
意匠・商標業務
上述したのは主に特許関連の業務ですが、商標系の弁理士は、意匠や商標の出願、拒絶理由通知対応、調査などを行います。
なお、特許も商標も両方やる弁理士はそれほど多くなく、ほとんどの弁理士は特許系か商標系かで専門が分かれています。
企業の知的財産部における弁理士の仕事
弁理士の約20%が企業に勤務しており、そのほとんどが知的財産部に所属しています。
企業で働く弁理士のことを企業内弁理士(または社内弁理士)と言います。
企業の知的財産部は、企業の特許、意匠、商標の出願業務等を扱う部署で、具体的には下記のような業務を行います。
企業知財部の仕事
- 発明の発掘
- 特許明細書の作成、確認
- 拒絶理由通知応答書類の作成、確認
- 他社特許の調査、分析
- 係争対応(他社からの侵害警告や訴訟への対応)
- 知財関連の契約書の作成(共同開発契約やライセンス契約など)
- 知財戦略の策定や予算管理などの企画業務
特許出願や拒絶理由通知への対応は、特許事務所における仕事と重複しますが、企業においては特許事務所が作成した原稿をチェックするだけの場合が多いです。
その分、他社の特許調査や分析、係争対応、戦略の策定などの業務の割合が高いです。
(業務内容は、企業や配属される部署によって異なります)
基本的に、企業内弁理士には、法律解釈が必要な案件や係争対応、訴訟などの高度な仕事がまわってくるケースが多く、特許事務所とはまた違った面白さがある働き方だと言えます。
最後に
というわけで、弁理士の仕事について、特許事務所に所属する場合と企業の知的財産部に所属する場合とをご紹介しました。
特許事務所に所属する弁理士は、特許出願などの知的財産の権利化に特化した、職人的な仕事になります。
一方、企業の知的財産部に所属する弁理士は広く浅くのゼネラリスト的な働き方になります。
弁理士を目指すには?
上で紹介したように、弁理士仕事の多くは特許に関する業務です。
特許の対象となる発明は最先端の技術となるので、それを理解するための理系的な素養が不可欠になります。
そのため、弁理士は、理系出身の人に人気の高い資格です。
弁理士になるには、弁理士試験に合格する必要があります。
弁理士試験は、
- 短答試験
- 論文試験(必須科目/選択科目)
- 口述試験
の3つのパートからなります。
出題される法律の範囲が多岐にわたり、且つそれぞれの法律について深い理解が求められる試験です。
(弁理士試験の制度についてはこちらの記事を参照。)
弁理士試験は国家資格の中でも非常に難易度が高く、ほとんどの受験生は何らかの資格予備校の講座で勉強しています。
そのため、弁理士を目指すための第1歩として、資格予備校の弁理士講座を受講することが必須です。
弁理士講座はいくつかの資格予備校で提供されていますが、代表的な資格予備校としては、以下があります。
おすすめ弁理士予備校
- 資格スクエア ※安さ、実績、サポート体制のバランス良し。当サイトのおすすめNo.1!
- LEC(東京リーガルマインド) ※弁理士予備校の最大手。合格実績が豊富
- STUDYing(スタディング) ※弁理士講座の受講料が業界最安値
実績を重視するのか、価格を重視するのかなどによって、自分に合う予備校が変わってきます。
弁理士予備校を選ぶポイントについては下記の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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弁理士予備校おすすめランキング|6社を徹底比較!
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